女性の薄毛(FAGAやびまん性脱毛症)治療において、ミノキシジルは数少ない有効な選択肢の一つです。しかし、女性がミノキシジルを使用する際には、男性以上に「多毛症」という副作用のリスクを、真剣に受け止める必要があります。なぜなら、女性にとっての多毛症は、単なる副作用という言葉では片付けられない、QOL(生活の質)を著しく低下させる深刻な美容上の問題となり得るからです。男性の場合、腕や胸の毛が多少濃くなっても「男らしい」と許容される側面があるかもしれません。しかし、女性の場合はそうはいきません。ミノキシジルによる多毛症は、まず「顔」に顕著に現れることがあります。これまで気にならなかった口ひげのような産毛が濃くなったり、もみあげがはっきりしてきたり、眉毛が太く、繋がりそうになったり。これらの変化は、化粧ノリを悪くするだけでなく、顔全体の印象を暗く、くすんで見せてしまいます。さらに、腕や足、指の甲といった、普段から露出することの多い部位の毛が濃くなることで、ムダ毛処理の頻度が格段に増えます。頻繁な自己処理は、肌荒れや埋没毛といった新たな肌トラブルを引き起こす原因にもなりかねません。薄毛の悩みを解消するために始めた治療が、別のコンプレックスを生み出してしまうという、本末転倒な事態に陥る可能性があるのです。こうしたリスクを考慮し、日本の薬局で市販されている女性用のミノキシジル外用薬(リアップリジェンヌなど)は、その濃度が「1%」に定められています。男性用の5%製品に比べて効果は穏やかですが、その分、多毛症をはじめとする副作用のリスクが低減されています。女性が自己判断で男性用の高濃度製品を使用したり、安易に個人輸入で内服薬(ミノタブ)に手を出したりすることは、極めて危険な行為です。もし、医師の指導のもとで治療を行う場合でも、多毛症のリスクについては事前に十分に説明を受け、万が一発現した際には、我慢せずにすぐに医師に相談し、薬の量を調整したり、治療法を変更したりといった対策を講じることが不可欠です。