冬になると抜け毛が増え、「このまま薄毛になってしまうのでは…」と不安になる方は少なくありません。そして、春になれば自然と「治る」のだろうかと期待する声も聞かれます。しかし、「治る」という言葉の意味合いや、抜け毛の原因によっては、その期待が必ずしも当てはまらないこともあります。まず、冬に抜け毛が増える原因として考えられるのは、前述の通り「乾燥」と「血行不良」です。これらの季節的な環境要因によって頭皮環境が悪化し、一時的に抜け毛が増加している場合は、春になり気候が温暖化し、湿度も上がってくれば、頭皮環境が改善され、抜け毛が落ち着き、元の状態に戻る可能性は十分にあります。この場合は、「季節性の抜け毛が治まった」と言えるでしょう。適切な頭皮ケアや生活習慣の改善を冬の間に行っていれば、よりスムーズな回復が期待できます。しかし、注意が必要なのは、冬の抜け毛の原因が、単なる季節的要因だけではない場合です。例えば、「AGA(男性型脱毛症)」や「FAGA(女性男性型脱毛症)」といった進行性の脱毛症は、季節に関わらず症状が進行していきます。これらの脱毛症は、遺伝的要因やホルモンバランスの乱れが主な原因であり、冬の環境悪化が引き金となって症状が顕著になることはあっても、季節が変わったからといって自然に治癒することはありません。この場合は、専門医による適切な診断と、薬物療法などの医学的治療が必要となります。また、甲状腺機能の異常や貧血、あるいは脂漏性皮膚炎といった他の疾患が原因で抜け毛が起きている場合も、その原疾患の治療を行わない限り、抜け毛は改善しません。つまり、「冬の抜け毛が治るかどうか」は、その抜け毛の原因が何であるかによって大きく左右されるのです。もし、抜け毛の量が異常に多い、特定の部位だけが薄くなる、フケやかゆみ、炎症などの頭皮トラブルが続く、といった症状がある場合は、自己判断せずに皮膚科や専門クリニックを受診し、医師による正確な診断を受けることが重要です。原因を特定し、適切な対策を講じることが、悩みを解決するための最も確実な道筋となります。