薄毛治療の選択肢として広く知られるミノキシジルですが、特に内服薬(ミノキシジルタブレット、通称ミノタブ)を使用する際に、なぜ「肝臓への負担」が懸念されるのでしょうか。その理由は、ミノキシジルが体内でどのように作用し、処理されるかという「薬物動態」に深く関わっています。私たちが口から摂取した薬は、その多くが肝臓で「代謝」というプロセスを経て、体内で効果を発揮する形に変えられたり、あるいは体外へ排出されやすい形に変えられたりします。肝臓は、いわば体内の化学工場であり、薬の分解や無毒化を担う極めて重要な臓器なのです。ミノキシジルも例外ではありません。口から摂取されたミノキシジルは、消化管で吸収された後、血流に乗ってまず肝臓へと運ばれます。そして、肝臓に存在する「硫酸転移酵素」という特定の酵素の働きによって、「硫酸ミノキシジル」という活性代謝物に変換されます。実は、発毛を促す直接的な作用を持つのは、この硫酸ミノキシジルの方なのです。この活性化された成分が、再び血流に乗って全身を巡り、頭皮の毛根に到達することで、血管拡張作用や毛母細胞の活性化といった効果を発揮します。この一連の代謝プロセスは、肝臓にとって一つの「仕事」です。ミノキシジルという異物を処理するために、肝臓の酵素が働き、エネルギーを消費します。健康な肝臓であれば、この仕事は問題なくこなせますが、毎日継続して薬を服用するということは、肝臓に毎日一定の仕事量を課し続けることを意味します。そのため、もともと肝機能が低下している方や、許容量を超える量の薬を服用した場合、あるいはアルコールなど他の肝臓に負担をかける物質と同時に摂取した場合などに、肝臓が疲弊し、機能障害を引き起こすリスクが高まるのです。頭皮に塗るタイプの外用薬でも、微量は皮膚から吸収されて肝臓で代謝されますが、その量は内服薬とは比較になりません。ミノキシジル、特に内服薬は、肝臓という臓器の働きがあって初めて効果を発揮する薬であり、その恩恵を受けるためには、肝臓への負担を常に意識する必要があるのです。
ミノキシジルは肝臓で代謝される薬!その仕組みとは?