アパレル企業で働く美咲さん(32歳)は、仕事もプライベートも充実した毎日を送っていた。しかし半年前、大きなプロジェクトを任された頃から、彼女の体には静かな異変が起きていた。最初は、ブラッシングの際にブラシに絡まる髪の毛が少し増えた程度だった。しかし、次第にシャワー後の排水溝が黒く覆われるようになり、朝起きた時の枕元の抜け毛も無視できない本数になっていた。「きっと仕事のストレスだわ」。そう自分に言い聞かせ、見て見ぬふりを続けていた。しかし、ある日、美容師に「少し頭皮が赤いですね、お疲れですか?」と指摘され、彼女はようやく自分の体が出しているサインと向き合う決心をした。その日から、美咲さんはインターネットで調べた方法を参考に、抜け毛チェックを始めた。毎晩、お風呂の排水溝に溜まった髪を数え、ノートに記録する。最初は自分の抜け毛の量を直視するのが怖かったが、続けていくうちに、ある傾向に気づいた。特に仕事が忙しく、夕食がコンビニ弁当や外食で済ませてしまう日が続いた週は、明らかに抜け毛の本数が増えるのだ。さらに、抜けた毛をよく観察してみると、毛根が小さく萎縮していたり、皮脂のような白い塊が付着していたりするものが多かった。彼女はハッとした。プロジェクトの忙しさを理由に、ここ数ヶ月の食生活は乱れきっていた。睡眠時間も平均で4時間程度。休日は疲れ果てて一日中寝ているだけで、運動も全くしていなかった。抜け毛は、そんな不摂生な生活に対する、体からの悲鳴だったのだ。美咲さんは、自分の髪を守るために、生活を根本から見直すことを決意した。どんなに忙しくても、自炊する日を週に3日は設ける。夜12時までにはベッドに入り、スマートフォンは見ない。通勤時に一駅手前で降りて歩く。小さなことからだったが、彼女は一つ一つ実行していった。抜け毛チェックのノートには、食事内容や睡眠時間も記録するようにした。すると、3ヶ月が経つ頃には、ノートの数字は明らかに変化していた。抜け毛の本数はピーク時の半分以下に減り、毛根の状態も健康的なものが増えてきた。抜け毛チェックは、美咲さんにとって、単に髪の状態を知るための行為ではなかった。それは、自分自身の心と体の声に耳を澄まし、自分を大切にすることを思い出させてくれる、かけがえのない習慣となっていた。