ミノキシジル内服薬は、高い発毛効果が期待できる一方で、肝機能障害をはじめとする全身性の副作用のリスクを伴う「諸刃の剣」です。そのため、薄毛治療を専門とする責任ある医師は、この薬を処方する際に、極めて慎重なリスクマネジメントを行っています。患者さんの安全を最優先に考えた、専門医による肝機能管理のプロセスを理解することは、安心して治療を受ける上で非常に重要です。まず、治療を開始する前の「初期スクリーニング」が不可欠です。カウンセリングで患者さんの既往歴や服用中の薬、飲酒習慣などを詳細にヒアリングした後、必ず「血液検査」を実施します。この検査の主な目的は、治療開始前の肝機能の状態を正確に把握することです。特に、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPといった肝細胞のダメージを示す酵素の数値をチェックします。この時点で、すでに基準値を超える異常が見られる場合や、重篤な肝疾患の既往がある場合には、原則としてミノキシジル内服薬は処方されません。リスクがベネフィットを上回ると判断されるからです。無事に治療が開始された後も、管理は続きます。治療開始後、1ヶ月後、3ヶ月後、その後は3〜6ヶ月ごと、といった形で「定期的な血液検査」を行い、肝機能の数値を継続的にモニタリングします。これは、服用開始後に肝機能障害を発症するケースがあるためで、「沈黙の臓器」の変化を客観的な数値で捉えるための、唯一にして最も確実な方法です。万が一、この定期検査で肝機能の数値に悪化が見られた場合、医師は迅速に対応します。まずは、薬が原因である可能性を考え、服用量を減らす「減薬」や、一時的に服用を中断する「休薬」といった措置を取ります。そして、再度血液検査を行い、数値が改善するかどうかを確認します。もし数値が正常に戻れば、減らした用量で治療を再開したり、あるいは副作用のリスクが低い外用薬に切り替えたりといった、代替案を患者さんと相談しながら決定します。このように、医師の厳格な管理下で治療を行うことは、副作用のリスクを最小限に抑え、万が一異常が発生した場合にも早期発見・早期対処を可能にするための「命綱」なのです。
専門医はこう管理する!ミノキシジルと肝機能のリスク